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2005年04月04日

マイナスイオンはインチキか

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 会社の喫煙室に、マイナスイオン発生機能付きの空気清浄機があります。
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 先日、この空気清浄機に水を補給している場面に出会いました。左側の青い部分は、水の中を水泡がぷくぷく上がる様子が見えて奇麗なのですが、ここの水を足していたのです。加湿器の機能がついているのかな、と思ったら、随分量が少ないですし、一週間もつと言います。マイナスイオンのための水じゃないのか、という話から、そもそもマイナスイオンって何?という話題になりました。

 正直、今まであまり意識したこともなかったのですが、空気清浄機によって「マイナスイオン」というものが空気中に放出され、それが「身体に良い」らしい、というだけで、正体がよくわかりません。そもそも、高校の化学でならった記憶では「イオン」というのは「何かのイオン」であって、「マイナスイオン」では大づかみすぎます。「マイナスイオン」が「陰イオン」とイコールなのかどうかもよくわかりません。この手の疑問が生じた時には必ずのぞいてみるDo you think for the future?さんの「進化しすぎた脳」というエントリにも「マイナスイオンは正確な用語ではない」とありました。
 化学でやった「陰イオン」は確か「水に入れた時に塩やらが化けるヤツ」で、空気清浄機の「マイナスイオン」とは大分イメージが違います。水を使ってイオンというと、電気分解でもするのかと思いますが、それなら水素と酸素が出てきてしまいますから、身体に良いどころではありません。
 結局その場では誰にもわからず、後で気になって調べてみました。

 googleで検索しても健康器具が並ぶだけだろうな、と思ったところ、ヒットの上位二位が「マイナスイオンはインチキか 市民のための環境学ガイド」「疑似科学批評(マイナスイオン批評特集)」でした。色々辿ってみると、マイナスイオンというのは疑似科学学説であり、ほとんどインチキである、というのが既に定説のようです。
 Wikipediaでは、

マイナスイオンという言葉は、日本にて1999年ごろからマスコミに頻繁に登場し、2002年夏に流行のピークとなった用語である。マイナスイオンという言葉は、しばしばその語感からマイナスの電荷を帯びたイオンすなわち陰イオン(アニオン)と混同されるが、この言葉自体に科学的定義はなく、実際の物質としてどのようなものを指すかはケースバイケースであると考えられる。

とされています。
 要するに、
1 「マイナスイオン」は和製英語であり、そもそも実態がよくわからない。
2 「マイナスイオン」の発生メカニズムもバラバラで、よくわからない。
3 仮に「マイナスイオン」が存在するとしても、それと健康との因果関係もよくわからない。
 ということです。結局マイナスイオンというのは家電業界の作り出した虚像であって、「何となく身体に良さそう」というイメージだけを売っている、というのが真相だったようです。

 ただし、わたしは「マイナスイオン」を発生させる、という機器の存在や、マイナスイオンを信じる人々を否定しようとは思いません。
 かつてわたしの友人がマイナスイオングッズにハマって、ドライヤーと美顔スチーマーを続けざまに購入したことがありました。遊びに行ったわたしにも「これ気持ちいいよ、試してみ」と薦めてくれました。イオンスチーマーは確かにリラックスした気分になれました。
 マイナスイオンとか何とか言う以前に、そもそも美顔スチーマーの効果も定かではありません。イオン導入機ラメンテ オーロラシューティカルを愛用していて効果を「実感」しているわたしですが、整形や医薬品ではないですから、その「実感」だって「気のせい」の範囲と言われてしまえばそれまでかもしれません。
 でも健康や美容というのは、その「気」の部分が大事なのです。デパコスが「夢」を売っている、などということは、マトモな女子なら誰でも知っています。どんなに健康に気を使ったって、百まで生きるわけではありません。スキンケアには余念のないわたしですが、やった時とやらなかった時で対照実験しているわけではありませんから、結局のところ「スキンケアで自分を愛でてやる」ということ自体が目的なのかもしれません。それでも十分なのです。
 件の彼女も言っていました。
「でもさ、仕事のなかった日はコレ、全然使おうって気にならないんだよね」。
 彼女自身も、スチーマーやマイナスイオンが絶対の力をもっていると信じ切っているわけではないのです。頑張った自分にお水をあげるように、潤してあげることが大切なのです。
 マイナスイオンなどの健康イメージは水と結びついていることが多いです。常にペットボトルの水やお茶を持ち歩いて、時々口に含まないと落ち着かない人がいます(わたしもそうです)。これらはいずれも、直接的な生理的効果ではなく、「乾いた」感じを癒してあげる心理的効果が重要なのは明々白々としています。
 ここで「精神的乾燥を生む病んだ社会構造こそ問題」などと大上段に構えても仕方ありません(こう叫ぶこと自体で当人が癒される効果はあるでしょうし、それだけだとしても市民運動には「治療」的意義があると思いますが)。世の中の仕組みは簡単には変わりませんし、その「病んだ」社会にこそ支えられ、その中でしか生きられないのがわたしたちです。奇麗すっきり世の中が整うまで人生を保留しておくわけにはいきません。矛盾を抱えながらも満員電車で会社に向かうことが、生きるということなのです。
 そんな生活の中で、小さな喜びとして空気清浄機やイオンスチーマーにお金を出すのは、極めて健全で妥当な対処法とすら言えるように思います。

 「そういう問題ではない、健康効果があるようにうたっていること自体が詐称なのだ」という反論があるでしょう。上の批判サイトにも「家電不況に喘ぐ電機業界の苦肉の策」「技術者は良心を売ったのか」といった内容の記述がありました。
 確かにこれは問題かもしれません。明白に事実と異なることを事実のように宣伝したとしたら、法に抵触する可能性もあるでしょう。
 しかしこれすら、全否定しようという気持ちにはなれません。
 商品というのは所詮はすべからくイメージを売るものです。仮にある性能表記自体が正しかったとしても、正しい記述を含めた商品の総体はイメージそのものです。ある車に表示通りの性能があったとしても、そんな性能の車が「必要」であるかのように感じるのは消費者の錯覚ですし、錯覚に錯覚を重ねるのが良くも悪くも資本主義なのであり、この市場にそれ自体としての外部はないのです(「無い」が有るにせよ)。
 「苦肉の策」で結構です。マイナスイオンでも何でも、家電業界が多少でも稼いでくれれば、お金の回りも微妙に良くなって結構な話ではないですか。
 霊感商法のような法外な価格を提示しているわけではありませんし、マイナスイオン製品のほとんどは、ドライヤーなり空気清浄機なりと、一定の機能性を備えたものです。マイナスイオンが出ていない、あるいは出ていても医学的に無意味であったとしても、とりあえず髪は乾かせるのです。
 技術者が「良心を売っ」たのだとしたら、正にわたしはそれを買いたいです。自らと家族の生き残りのため、心に浮かぶ疑問を踏みにじり、目的不明の機器を設計し取り付けた彼らの背中の方が、安全圏から能書きだけ説いている大学人の言説より遥かに美しいです。

 家電売り場にいって、同じような価格・デザインのドライヤーが二つあり、一つがマイナスイオン機能付きであったら、迷わずマイナスイオンの方を買います。
 そのお金は、「マイナスイオン」と書かれたシールに払ったのだと思うでしょう。髪が乾かせる上シールが貼ってあるのですから、十分お買い得です。


ナショナル マイナスイオン ターボドライ イオニティ EH5204-W 6,279円
HITACHI 空気清浄機 15畳 EP-X11 S 8,580円

関連記事:「USBポートを使う空気清浄機」

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