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2005年05月02日

エゴマ油でダイエットできるか α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸

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 最近エゴマ油(シソの実油)が話題になっています。
 健康志向でダイエットにも有効、といったふれこみです。会社のビルのコンビニには「シソの実おにぎり」というのもありました(これは緑色が奇麗で、美味でした)。
 しかし何の油でも脂肪は脂肪です。健康に良いというエゴマ油とは一体何で、本当にダイエットにも有効なのでしょうか。

 「マーガリンとトランス型脂肪」「うるめいわしの栄養メモ」などでも触れましたが、もう一度脂肪酸の種類を整理しておきましょう。
 脂肪酸とは炭化水素鎖の末端にカルボキシル基がついたもので、分子内に二重・三重結合を含むかどうか、どこに多重結合が来るによっていくつかの種類の分類されます。
 炭素には四つ空いている手がありますが、これを全部別の人とつないでいるか、一人の人と二本も三本もつないでいるか、という違いです。高校の化学を思い出します(笑)。ちなみにこの定義から考えると、お酢は一番単純な脂肪酸ということになります。
 大別すると飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸はさらに一価不飽和脂肪酸(n-9系)と多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸はさらにn-3系とn-6系に分類できます。
 飽和脂肪酸は肉類に多く含まれ、動脈硬化を促すなど一番「悪者」扱いの脂肪酸です。中でも人工的に水素を付加したマーガリンやショートニングのトランス型脂肪酸は最悪で、クローン病やアトピーの原因となっているという説もあります。欧米では禁止・もしくは制限されており、先進国でこれだけ放置されているのは日本くらいです。
 一価不飽和脂肪酸(n-9系)とはオリーブ油に多く含まれるオレイン酸などで、心臓病、がんの発病性低下、血漿コレステルール値を下げる、などの働きがあります。体内でも合成できるので必須脂肪酸ではありません。
 n-6系不飽和脂肪酸は、一番一般的に食用油に使われているリノール酸などで、かつては「コレステロールを下げ、成人病を予防する植物油」としてもてはやされていました。しかしその後、善玉コレステロールまで下げてしまうことがわかり、さらに、過剰摂取による発ガン促進・アレルギー発症や動脈硬化の促進作用が動物実験で指摘され、この頃はすっかり「悪役」です。エゴマ油が宣伝される時の仮想敵も、このリノール酸です。
 エゴマ油に豊富に含まれるα-リノレン酸は、n-3系多価不飽和脂肪酸に分類されます。抗がん作用、血小板凝集抑制作用、血圧降下作用があり、また免疫の過剰反応を抑えるともされています。エスキモーに心臓疾患が少ないのは、このn-3系多価不飽和脂肪酸を魚類から多く摂っているため、と言われています。
 n-6系とn-3系は、免疫系に対して相補的な働きをし、n-6系が炎症反応などを促進する一方、n-3系は抑制するようです。花粉症などのアレルギーに対しては、n-3系を摂取する方が吉、というわけです。

 ややこしくなったので、表にまとめてみます。

種類脂肪酸名含有食品特徴
n-3系多価不飽和脂肪酸α-リノレン酸亜麻、しそ動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、脳卒中、高脂血症などの予防・改善/癌の発生・増殖の抑制/リノール酸の作用を抑制/アレルギー症状の改善/ボケ防止や精神症状の改善



エイコサペンタエン酸(EPA)さば、いわし、さんま血液擬固の減少/動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、脳卒中、高脂血症などの予防・改善/アレルギー症状や炎症性疾患の症状改善
ドコサヘキサエン酸(DHA)かつお、まぐろ脳に多く含有/腱脳効果/動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、免疫性疾患などの予防・改善
n-6系多価不飽和脂肪酸リノール酸コーン、ベニバナ、大豆血中コレステロール値低下/過剰摂取でHDLまで抑制、アレルギー症状が発症しやすくなる
γ-リノレン酸
アラキドン酸レバー、卵高血圧、動脈硬化、心不全、胃潰瘍、月経困難症、アレルギー性疾患などの予防・改善にも有効だが、とりすぎると逆効果
n-9系一価不飽和脂肪酸オレイン酸オリーブ、菜種、アーモンド、ピーナッツ、アボカド心臓病、がんの発病性低下、血漿コレステルール値低下、胃酸分泌の調整




飽和脂肪酸ラウリン酸ヤシ、ココナッツコレステロール値を上げる、体内で分解されにくく蓄積する(肥満)、過剰摂取は動脈硬化になりやすい
ミリスチン酸
パルミチン酸牛肉、ヤシ、バター、ラード
ステアリン酸羊肉、牛肉、バター

 こうして見ると、確かにα−リノレン酸はリノール酸よりずっと現代人の食生活に適しているようです。少なくとも「植物由来だから」という信仰でリノール酸を摂ってしまうよりはるかに健康的です。
 では、積極的にエゴマ油を使って調理すべきなのでしょうか。
 あくまで個人的な意見ですが、わたしの答えはNoです。

 いくつか理由があります。
 まず第一に、α-リノレン酸には熱によって酸化しやすい、という問題があります。そのためエゴマ油などの宣伝でも「ドレッシングなどに」とされていることが多いのです。α−リノレン酸を摂取するなら、加熱調理以外の方法が適しているのです。
 それならば、いわゆる食用油としてよりは、生の食品から直接摂るのが良いはずです。同じn-3系多価不飽和脂肪酸であるEPAやDHAは青魚に多く含まれています。一番良いのは、これらのお魚を生で食べることです。「シソの実おにぎり」も正解です。
 第二に、そもそも食用油などという形で脂肪酸を摂ること自体への疑問があります。いくら「身体に良い」といってもマーガリンやラード、リノール酸に比べればマシ、というだけの話で、大量摂取すれば肥満に直結します。
 「必須脂肪酸」などと言うと、いかにも足りないと病気になりそうですが、ただ単に体内では合成できず、食品から摂取するしかない、というだけの話です。そして食品からは意識しないでもイヤというほど入ってきてしまうのですから、わざわざ頑張って摂る必要などないのです。

 これらの条件の中で、それでも食用油に何か選ぶとしたら、オリーブオイルをお勧めします。
 n-9系一価不飽和脂肪酸は酸化しにくく、常温で液体であり調理にも使い易いです。体内で合成できるため「必須」ではない、とされますが、「必須」のものも足りないことなどまずあり得ないのですから、事実上同条件です。また体内に存在するだけあって、n-9系一価不飽和脂肪酸は免疫系に影響を与えない、とされています。
 わたしは調理にほとんど油を使わないのですが、使う時はすべてオリーブオイルです。特にエクストラバージンオリーブオイルはトコフェロール類(ビタミンE)やポリフェノール類といった抗酸化成分が豊富です。
 エクストラバージンオリーブオイルでは風味が強すぎる、という場合は、一般のオリーブオイルでも良いでしょう。お値段もいくらかリーズナブルです。両者の違いは精製工程を経ているか否かであって、オレイン酸の含有量は変わりません。
 「オリーブオイルは高い」という声が聞こえてきそうですが、それなら油の絶対的な資料量を減らせば良いことです。同じお金を出すなら、極力油を使わず、使う時は良いものを少し、というスタイルの方が、安いサラダ油を大量に使う食生活より遥かに豊かでしょう。


小豆島オリーブ純粋食用オリーブオイル

『低脂肪でもおいしいねっ』 杉村ともこ 文化出版局 1,470円


 余談になりますが、食べ物に限らず、足りないものを摂ることより、必要のないものを捨てることが大切、とわたしは思っています。
 情報然り、そして武道やスポーツにおける「脱力」然りです。
 捨てに捨てまくって、なお必要であれば、イヤでも手にすることになるでしょう。もちろん、この「捨てる」というのが一番難しくはあるのですが。
 うちにはテレビもありませんが、スタンディングバッグは捨てられません(笑)。

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