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2006年01月11日

オールドボーイ

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 友人からプッシュされてDVD見てみました。
 パク・チャヌク監督チェ・ミンシク主演の韓国映画「オールドボーイ」です。
 一応致命的ネタバレにならないよう書きますが、「なぜ?」でひっぱる作品なので、気になる方はご覧になってから読んでください。

オールド・ボーイ プレミアム・エディションオールド・ボーイ プレミアム・エディション

 といっても、某所で既にちらっと書いてしまったので、簡単な感想だけメモ。
 良かったです。
 薦めてくれた友人が「日本映画やばいよ」と言っていたのですが、わたしたちの世代の日本映画ファン、映画人崩れ、80年代邦画好きにはたまらないものがあると思います。
 ペタッとした色使い、あの頃のちょっと小ざかしい日本映画によくあった芝居っぽい画面構成。
 CGやら擬似ワイプな画面転換もあるのですが、このごろの日本映画みたいに斜に構えていないところが良いです。セルフパロディとか「どうせ」みたいじゃなくて、素直にやってる感じに好感が持てます。
 「ジェイコブスラダーかっ」「セブンかっ」な演出もところどころあって、あれでセピアが銀残しキツかったりしたら危険ですけれどね(笑)。

 ストーリーについては賛否両論分かれる作品なのではないかと思います。
 監禁の理由そのものについては、正直「そんなに大騒ぎすることかしら」とも思ってしまいましたが、別段そこに説得力のあるモチベーションが控えている必要もないでしょう。むしろバカバカしいほど空虚な方が美しいです。ただ、製作者サイドで期待させたかったようなタブー感というのが、少なくとも日本の観客にはリアルに伝わっていなかった気はします。それが日韓のタブー観の違いによるのかどうか、といった議論は不毛なのでやめておきましょう。

 あまり物語についてどうこう言いたくないので、以下、個人的に気に入ったところを列挙。

・監禁部屋のデザイン。
・監禁部屋に戻ったときの廊下格闘シーン。横から延々とトラッキングして1シーン1ショットのとこ。「勝てるわけないやんっ!てか、背中刺さってる、刺さってる!」な芝居くささが良かった。80年代邦画っぽい。
・スクーターおっかけて坂を走って登るところ。北野武っぽい。あの坂ロケハンで見つけたとき嬉しかったでしょうねぇ。背景のトタンが最高。
・敵役が外出するときの薄水色ジャンパー。「笑い男」っぽい。
・主人公と敵役(?)の顔がどっちもすごい。

 ちなみに、映画を見てから原作があることを知って、コミックの方も読んでみました。

オールドボーイ―ルーズ戦記 (1) オールドボーイ―ルーズ戦記 (1)

 コミックを教えてくれた友人(映画紹介者とは別人)は「原作マンガの方が面白い」と言っていたのですが、わたしは映画の方が好きですね。
 原作の方も相当引き込まれて一気に読んでしまいましたし、かなり気に入りましたが、ちょっと主人公がかっこよすぎでしょう(笑)。また、劇画ノリは嫌いじゃないのですが、さすがにキツすぎて少し引きました。こっちはほんと「男の世界」ですねぇ。
 コミックの「オールドボーイ」は少し他者性が欠けている印象。箱庭的というか、閉じてぐつぐつ煮ていくタイプの演出です。だからあの文化の好きな方はどんどんのめりこむけれど、たとえば絵柄一つで拒絶してしまう人もいるのではないでしょうか。女の扱いとか、すごいものがあります(笑)。
 映画の方はマンガに比べると開かれていますね。その分密度は薄いかもしれませんが、びっくり感とか残忍さが「フェミニン」な気がします。カギカッコをつけたのはもちろん、ああいうものを普通は「フェミニン」と言わないからですが、要するに劇画的ハードボイルドという厳しそうでいて閉じたワールドを踏みにじっている、というあたりに「フェミニンな残忍さ」を感じる、ということです。
 映画の方がずっと救いがないですしね。
 別の言い方をすると、コミック「オールドボーイ」には<お母さん>が存在するけれど、映画「オールドボーイ」には<お母さん>がいない、あるいはかなり希薄、ということです(敢えて詳説しません)。

 映画版と原作コミックの「オールドボーイ」、両方比べてみて感じるのは、映画のキャスティングの素晴らしさです。
 もちろん、コミックのファンの方は「あんなの五島じゃない!」とお怒りでしょう。その気持ちはよくわかります。
 でもあそこでコミックの雰囲気をそのまま映画化しようとしたら、単なる中途半端なハードボイルド映画になってしまって、作品としては見られたものではなかったでしょう。あんなキャラ、現実の人間では再現不可能ですよ(笑)。
 映画の方は、主人公のかっこ悪さ、泥臭さがすごく素敵です。どう見てもオヤジ狩りに勝てそうには見えませんからねぇ(笑)。
 個人的に「よろめき方」に男の色気を感じます。暴れまわった後で疲れた感じに壁に手をついたり、といった仕草がすごくセクシー。「カッコつけたいんだけど、もうカッコつけすぎて限界や・・」みたいにギリギリでグラッと足元揺れる動きが美しいです。
 若い子が形だけやる「よろめき方」じゃなくて、酸いも甘いも知って、思い通りにならないこともいっぱい経験して、それでも無駄と知りつつツッパり続けて、でもうっかりよろめいちゃった「よろめき方」がイイです(<フェチ)。

 それ以上に秀逸なのが、敵役の俳優ユ・ジテです。少なくともあのキャラに関しては、映画の圧勝だと思います。
 チェ・ミンシクの存在感がすごいですから、その向こうを張ってしかもああいうキャラを演じるというのは相当な力量でしょう。ただの「濃い人」じゃできないはずです。
 彼の「そこにいる感じ」を味わうだけでも見る価値があるのではないでしょうか。

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