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2006年05月09日

『臆病者のための株入門』

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 プロフにも書いていますが、わたしはお金の話が苦手です。
 別に清廉なのではなく、純粋に疎くて、難しくて面倒だから考えたくないのです。その手の文章を読もうとすると活字が目で反射されているようで、かなり最近になるまで定期預金にすら入ったことがなかったくらいです。
 別に運用するほどのお金もないので困っていたわけではなかったのですが、さすがにイイ歳して恥ずかしいですし、猫も杓子も株というご時勢になってきたので、勉強も兼ねて少し手を出してみることにしました。自分で「コレ」と決めればさすがに愛着が沸きますから。
 その甲斐あって以前よりはいくらか知識もついてはきたのですが、一向に変わらない、というかますます強く感じるようになったことがります。
 株に関する本をいくら読んでも、少しも「身になった」感じがしないんですよ。

 どんな分野でも、学習をすすめるのに効率的な本とそうでない本があります(読書で知識を得ようとすること自体の是非はひとまずおいて)。「良い」本ばかりを選んで最短コースを歩ければベストですが、普通、最初のうちは「外れ」覚悟でなんとなく惹かれた本から手をつける必要があります。というのも、この段階ではそもそもどれが「良い」本なのか見分ける力もないため、何はともあれとにかく始めてみることが大切なのです。
 そのうち段々と教材の良し悪しを見抜けるようになってきますから、細かくセレクションをかけるのはそれからでも遅くありません。周囲に親切な人がいて良いものを教えてくれることもあるかもしれませんが、何が「良い」かには個人差があるため、最終的には自分で選ぶしかありません(逆に言えば自分にとって「良い」本を当てられる友人は真の理解者だと思います)。
 ところが株については、まず書店でそのコーナーにいっただけでもうんざりするような本しか見当たりません。
 さすがのわたしも本を読んで儲けられるとまでは思っていませんが、通俗的な本はどれを見ても「我こそは秘伝を伝授するものなり」という顔をして、しかも一見もっともらしいけれど実際に適用するとなるとどうするの?という理論ばかりです。
 こういう時「誰が本当のことを言っているのかわからない」といえばそれらしく響くのでしょうけれど、実際は違うと思います。確かに本当のこともわからないのですが、それは核心ではないのです。
 まず第一に「誰でも儲けられる!」秘伝は存在しません。したとしても書籍などで公開するバカはいませんし、百歩譲ってそのバカがいても、株式市場の本質からして公開された途端にその秘伝はちっともオイシイ話ではなくなります。
 それでいて誰もが「一発当ててやろう」と小さな野心をたぎらせているのが市場というものですから、すべての本がもっともらしいことを書いていて、その全部がアテにならない、というのは当然のことです。
 気持ちが悪いのは、これらの本の著者に「誠意」が感じられないからではなく(誠意はある場合もあり、これが最も質が悪い!)、「好奇心」のようなものの匂いがしないからです。
 「好奇心」というのは、素晴らしい理論を組み立ててみても、さらにそれを斜めから見て全然本質的じゃないところをツッコんでみたり、といった「面白がる」精神です。ユーモアと言っても良いかもしれません。
 市場に携わる方たちは皆真剣で、そんなネタをやっている暇はないのかもしれません。でも少なくともわたしにとっては、こんなインチキくさくて楽しい世界にいながら、そのパチモンぶりをネタにして面白いことの一つも言いたくならないような人間というのは、さっぱり理解できないんですよ。
 電気の差込口の隣にピンセットが置いてあったら、ふらふら~とツッコんでみたくなるじゃないですか。
 元一級建築士とか軍事評論家とかが歩いてきたら、頭髪について何事か言及したくなるじゃないですか。
 いや、ツッコんじゃダメですよ。ダメなのは知ってますよ。でもツッコみたくなるでしょう? ツッコみたいけれど、理性でグッとこらえるのが普通の人間じゃないですか? 違います? どうも違うらしい、普通は自分ほどフラフラ吸い寄せられないらしい、ということも最近になって学習はしているんですけれど、それはともかく、少なくともわたしはそこでフラフラ~とならない人はちっとも理解できないし少しも信用できないんですよ!

 ちなみにコレは女の子を口説きたい殿方に求められるスキルにも通じるので、そういう欲の強い方はよく聞いておいてください。欲しいのは真実じゃないんです。裸でポンと置いてあるような真実なんてそもそもないですし、あるとすればその世界全体の「インチキくささ」そのものが一つの真理です。
 だから必要なのは共感です。正しいか間違っているかは別問題として「だよね~」と言えるような本が欲しいんですよ。でもどいつもこいつも、「そうだよねー大変だったねー」の一言が言えずに、正しい解決法なんて教えてくれちゃおうとしてるんですよ。アンタ一生女にモテないよ

 株とかお金とかの本にこの手の「モテない」書籍が多いのには理由があるでしょう。
 世の中には、少なくとも見た目上、二種類のタイプの書籍があります。
 「役に立つことが書いてあるので、その知識を得るための本」と「読むこと自体を楽しむ本」です。
 原付免許の教習本などは前者で、小説などは後者になります。
 もちろん両者の中間形態もあって、料理本などは一見前者のようで、実は後者が主だったりもします。
 「役に立つ」系は多少表現が垢抜けていなくても、肝心なことが伝わっていればそれでOKです。本の外にある現実的問題に対処するのが目的ですから、本自体がそれほど魅力的でなくても成り立つのです。一方、後者は本そのものや文章自体が魅力的である必要があります。
 正確には、前者の「役に立つ」というのも「役に立ちそうな感じ」という娯楽を提供しているだけですから、最終的には書籍はすべて後者に収斂します。ただあくまで現象に限って言えば、やはり二つの志向性があると言って良いでしょう。
 この時、株の本というのは一見すると前者タイプのように見えるのです。
 TOEIC本とか「手紙の書き方」の仲間のような顔をしているのです。
 ところがこれは大きな勘違いで、そう思っているのは一部の愚劣な読者と一部の狂信的執筆者だけで、お金の本はすべて後者に分類されるのが本来です。なぜなら、「本を読んで儲けられた」などという話があるわけがないからです。その理由は上にも書いた株式市場の本質によるものですから、揺るぎありません。
 もちろん、たまたまある本を読んでその通りにしたら儲かった、ということはあるでしょうが、別にそれは本のお陰ではなく、ただの偶然と言ってよいでしょう。こんなことをグダグダ繰り返すのはうっとうしいのでやめますが、この件についてもこれから紹介する本にわかりやすく書いてあります(っていつまで経っても紹介に辿りつかない・・)。
 要するに株の本は本当は「楽しむ」系の娯楽を提供しなければならないのに、「役に立つ」系のフリをしたり自分でもそう思い込んでいたりするから、ちっとも魅力的ではないのです。新興宗教の本と一緒です。工学部出身の男と一緒です(すいません・・)。

 と、ここまで来てようやく本題に入れるのですが、そんな「モテない」株本の中で、わたしが初めて「この男デキる!」と感じられたのが、この『臆病者のための株入門』でした。

臆病者のための株入門 橘玲『臆病者のための株入門』橘玲

 念のためですが、この本を読んでも別に儲かりません。
 また、書いてあることがすべて事実なのかどうかも知りません。わたしがそうだと思っていたとしても、何せ金融オンチでは右に出るものがいないくらいの人間の言うことですから、アテにしてはいけません。経済に詳しい人がみたら色々ツッコミ所もあるのでしょう。
 でもそんなことは別段わたしは興味もありません。欲しいのは真実じゃなくて共感ですから。
 この人はね、リアルです。ぶっちゃけ話をしてくれるからです。
 もちろんこの「ぶっちゃけ」というのがまた怪しくて、「ぶっちゃけ」と言いながらどこまで本音なのか、あるいは確かに本音なのだけれど本音の方向性が自分と一緒か、色々なパターンがあります。でも少なくとも、この人の「ぶっちゃけ」はわたしと似た「ぶっちゃけ」です。読んでいて素直に「そうよね~」っとココロを開けるのです。
 つまりこの本は、読んで儲ける本でも勉強する本でもなく、楽しむ本です。
 そして本というのはつきつめれば儲けるものでも勉強するものでもなく、楽しむものである以上、この本は正しい本です。
 それをわかって計算ずくで書いているから、著者は成功しているのでしょう。

 と、前置きが長くなったので中身のことは書きません。
 以上のしょうもないわたしの語りにちょっとでも共感できる方なら、間違いなく楽しめると思います。


 ちなみに、『臆病者のための株入門』が良かったので、

「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計

 この本も今読んでいるところですが、こちらもなかなか共感できます。でもまずは『臆病者のための株入門』がおススメ。

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