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2006年06月17日

『外国語としての日本語』佐々木瑞枝

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 外国人への日本語教授法というものには前々から興味があったのですが、その手の本としては初めて読みました。

『外国語としての日本語』佐々木瑞枝『外国語としての日本語』佐々木瑞枝

 既に十年以上前に出版された本なのですが、非常に面白く読めました。電車で読んでいてうっかり二駅も乗り過ごしたくらいです(笑)。

 日本語教育を巡る環境は、おそらくこの十年で随分と変化したのではないかと思うのですが、日本語そのものがガラリと変わったわけではありません。今読んでも得るところ十分です。
 佐々木先生も指摘されていますが、いわゆる口語文法(国語文法)は外国人への教授では無力ということは想像できていたので、それではどのようにしたら伝わるのか?という辺りが大変わかりやすく実感できました。できればこういうものこそ学校で教わりたかったです。
 以前旅先で出会ったオランダ人に「日本語の勉強は難しいんだろう?」と言われて「いや、わたしはわからない」と答えたところキョトンとされたので、「日本語はできるけれど、外国語として日本語を学んだことはないから」とオチを言ったことがあるのですが、母国語というものはなかなか分析的にとらえることができないものだと思います。
 教授法についても、ナイーヴな人だと「やっていればわかるさ!」と考えてしまうのかもしれませんが、子供ならともかく、一定以上の年齢になった相手に対象言語一本で一から指導するなどというのはナンセンスでしょう(そういう「ネイティヴ信仰」が日本の英会話学校などではまかり通っているようですが・・)。
 日本語は様々な点で非常に習得の難しい「外国語」だと思うのですが、この本ではその具体的なツボが見事に整理されていて、目からウロコがオチまくりました。

 まったく気付いていなかったとしては、冒頭で触れられている発音面です。
 「日本語は、文法や漢字は難しいけれど発音は単純」と思い込んでいたので、実にハッとさせられました。いや、これはわたしがサウンド的感性に弱いというだけかもしれませんが・・。
 「最初に高い音が来ると次は低い音」などという法則は、確かに外国人でないと気付かないのではないかと思います。
 わたしは有声音と無声音の区別がさっぱりつかない発音オンチですが、こういう日本人は、実は外国語の前に日本語の発音に耳を澄ませるべきなのかもしれません。母国語の中で意識しないまま使い分けている音を前景化できれば、「発音が難しい」とされている言語についても、もっと繊細な耳が持てる気がします。ちょっと気付くのが遅かったですけれど・・。
 ちなみに、言われてみて初めて気付きましたが、例えばpとph(無声音と有声音)の区別というのは、日本語の中でもあります。ただこの分節が意味と対応していないため、事実上「無きもの」とされているのです。この辺が日本語のやっかいなところで、「発音下手」の一源泉なのかもしれません。

 もう一つ感銘を受けたのは、佐々木先生のお人柄です。
 お会いしたこともないので人柄も何もないかもしれませんが、単に一日本語教師として母国語を知悉しているというだけでなく、教授法や学生さんに対する真摯な態度が行間からにじみ出ています。日本文化の伝え方もとても自然で、大変尊敬できます。
 これはにわかナショナリスト的な意味で言っているのではありません。むしろ絵に描いたようなウソくさい「日本文化」を語るのでも、ニヒルぶってサブカルを強調するのでもなく、日本語習得のために必然的に要求されてしまう「文化的」要素をタイトに教授されている、ということです。
 外国に行ったり外国人と接すると、普段何も考えていない人でも(何も考えていないからこそ)突然即席な日本論を語りだしてしまったりしがちなものですが、そういうステレオタイプな過剰に陥ることなく、ニュートラルに「外国人の学ぶべき(学ぶと得な)日本」を伝えています。
 こんな先生に教えて頂ける留学生さんたちは幸せでしょうし、またそれこそ「にわかナショナリスト」として、佐々木先生のような方が将来ある学生さんたちに対し日本を代表して頂いていることに、誇りと安心を感じます。


 ウィトゲンシュタイン本を読んだ直後だっただけに、二重に興味深かったですよ。

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