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2006年07月11日

『アメリカの宇宙戦略』明石和康

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 宇宙開発ネタ、好きです。
 子供のころ宇宙の話が好きで、スペースシャトルにもかなり愛着を持っていました。
 でも成長するに連れ、宇宙開発というものが軍需産業の一端にすぎないことが人並みにわかってきました。
 百歩譲って軍事的動機以上の「フロンティア・スピリット」や技術革新上の必要性を宇宙開発に見るにせよ、「地球上にはさまざまな問題が山積されているのに、莫大な予算を費やしてロケットを打ち上げることにどれほどの意義があるのか」というエコロジストの主張も一理あるように思えてしまいます。
 人間、そんなに合理的にはできていないですから、仮に月や火星に行くことがまったく無意味だったとしても、行きたい気持ちが盛り上がってしまえばやっぱり行くのでしょうし、応援したい人は応援するでしょう。どちらかといえば、わたしも応援派です。飢餓で死ぬ子供たちがいても、それを振り切ってロケット飛ばすような外道の肩を持つ口です。
 とはいえ、そんな祭スピリットを盛り上げるには、相応のエネルギーが必要なのも事実です。
 今の宇宙開発にはそういうヴィジョンというか、人を惹き付けるだけのロマンがあるのでしょうか。
 目に付くのは官僚化したNASAが失敗を繰り返す姿、大目標として掲げられるのも30年以上前に一度到達した月への回帰・・なんだかショッパイです。

 といった感じのワタクシが見かけて、手にとってみたのがこの一冊。
『アメリカの宇宙戦略』明石和康『アメリカの宇宙戦略』明石和康

 時事通信のベテラン外信部記者明石和康さんが、綿密な取材に基づいて報告するアメリカの宇宙開発論です。
 コンパクトにまとまっていて「アタリ」のNHKスペシャルを見ているようにいい気持ちになれました(笑)。
 本題の宇宙戦略自体についてはまとめるだけの度量もないので、極私的にグッと来たポイントをフェチ的にメモ。

・ライト兄弟が操縦技術を重視していたこと
 史上初の動力飛行達成で知られるライト兄弟ですが、彼らが飛行機のメカニズムと同じくらい「操縦技術」を重んじていた、という下りにはハッとさせられました。
 ライト兄弟は自転車屋さんだったのですが、自転車だって初めての人が乗ったら止まっていることもできません。というか、止まっている方が難しいです。
 開発というと、そのもの自体の構造・機能にばかり目が行ってしまうものですけれど、運用サイドというか、「実際の使い方」とその習得法とセットになって初めて本領を発揮する、という点は重要だと感じました。この辺はソフトウェア開発と一緒ですけれど、特に飛行機の場合、身体的な訓練を伴う技術ですから、開発者に求められた「説得力」は尋常ではなかったでしょう(開発者自身が飛んだわけですけれどね)。「こんなの運転できないよ!」と言われても「できる! 練習すれば乗れる! お前ならやれる!!」と確信を持って言い切れるマッドサイエンティスト魂が必要ですからね・・。

・レーガン元大統領の意外な側面
 レーガン元大統領と言うとタカ派なイメージばかり先立ってしまいますが、史上初の核兵器の削減に成功した大統領だということを初めて知りました。
 SDI構想についても、「スターウォーズ計画」というマスコミの呼び方は嫌いだったそうです。彼がそもそもSDI構想を考えたのは、破滅的報復合戦以外に核戦争の末路がないこと、飛来してくるミサイルに対し防衛的手立てを何ら持っていないことに対するショックから来ていて、最初は「こんな感じで防衛するってのもアリなんちゃうんかな~」くらいだったようです。それがどんどん攻撃的なヴィジョンへと読み替えられしまって当惑していた一面も伺えます。でもまぁ、それが結果的にソ連に核削減を飲ませるカードにもなったわけですから、結構な話なのかもしれませんけれど。
 なんというか、確かにタカ派な人ではあったのでしょうけれど、同じ共和党の現職さんに比べると大分頭の良い人だったんだなぁ、とわかりましたわ・・。

・CEV(Crew Exploration Vehicle)
 その現職さんは2020年までに、有人ミッションによって月に戻るという目標を掲げていて、これについては「火星に行くのになぜ月に基地を? 月にだって重力があるのだから無駄」「火星ミッションに利用できる月の資源などない」と色々ツッコミが入っているようですが、そのへんはまぁ「あのヒトはアレだから」で全部うっちゃって、選挙対策でも何でも夢を語ってくれること自体は嫌いじゃないです。
 で、そこでスペースシャトルの後継機として考えられているのがCEV。ちらほら噂は聞きつつ、具体的にどういうものなのか知らなかったのですが、本書で実像がわかりました。なんだかアポロとスペースシャトルの継ぎ接ぎみたいな代物ですね。
 でも「再利用可能な往還機」モデルにこだわらなかったことは評価できると思います。何度も飛べる宇宙船というのは確かにロマンがありますけれど、再利用コストが新規建造コストを上回るなら意味がないですし、なんでもかんでも使い回せば良いというものではないでしょう。『リサイクル幻想』ではないですが、「再利用のための再利用」では仕方ありません。
 ソフトウェアと違って、動力パーツは使えば磨耗するわけですし、ポンコツを無理して使って事故を起こすくらいなら開き直って毎回作った方がマシでしょう。また技術革新の速度を考えたら、使えそうなところはコンポーネント的にギュッとまとめておいて、新しい技術が出てきたらそれも取り込んでやり直す、というスタイルの方が発展性があるように感じられます。
 それにしても、中国がすごい勢いで技術を磨いてきているのに、2020年とか言っている余裕はあるのでしょうか。ある意味、昔の米ソ宇宙開発レース的になってきて、傍観者として見ている分には面白いのですけれど・・。

 ちなみに宇宙開発フェチにはMOON LIGHT MILEもお勧め。

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