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2006年10月17日

『宇宙戦争』と横田順彌

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 先日年甲斐もなくオールなどしてしまい、始発待ちにお友達と二人でネカフェに入ったのですが、土曜の終電すぎでは当然のように空席がありません。空いていたのが通常料金プラス1時間600円のシアタールームだけで、仕方なく入ったこのデラックス・ルームで暇つぶしに見たのがスピルバーグの『宇宙戦争』。

『宇宙戦争』 トム・クルーズ ダコタ・ファニング ティム・ロビンス ミランダ・オットー ジャスティン・チャットウィン
『宇宙戦争』 トム・クルーズ ダコタ・ファニング ティム・ロビンス ミランダ・オットー ジャスティン・チャットウィン

 こんな怖い映画だとは知りませんでした。

 シアタールームの素晴らしいAV環境によるところが大なので、部屋でDVD見たらそれほどでもなかったでしょうが、正直、寝ようと思ってたのに寝られなくなるくらいビビりました。
 いや、多分そこまで怖がるヒトもあまりいないでしょうし、この映画の総合評価はおそらくもう一つなんじゃないかと思うのですが、わたしとしては結構インパクト大きかったです。
 小学生の頃にウェルズの原作を読んだはずなのですが子細はとうに忘却の彼方、映画で見るとびっくりするくらい救いがないです。カタルシスといったら、最後の軍隊のロケット弾くらいじゃないですか。酷評する人たちは、おそらくこの閉塞感や、オチの「しょうもなさ」を批判されているのでしょう。
 こういう映画になってしまった原因は、ウェルズの原作が「状況」を描くタイプの小説であったためでしょう。映画という媒体は、どうしても主人公を巡る具体的なエピソードを中心にストーリーを語らざるを得ません。「状況」タイプの小説では、必ずしも主人公のガンバリで世界が動いてくれるわけではありませんから、結果としてハリウッド映画としてはカタルシスに乏しいものになってしまったように思います。
 でもこの「手も足も出ない感じ」が逆にリアルで良いとも思うんですよね。『インディペンデンス・デイ』とは好対照です。多分ね、ほんとに宇宙人攻めてきたらこんな感じよ(笑)。

 で、久しぶりにウェルズの世界に接して、SF好きだった子供の頃を思い出しました。
 『宇宙戦争』と言えば、個人的にウェルズと同じくらい印象に残っているのが横田順彌さんの『火星人類の逆襲』です。
 ウェルズの『宇宙戦争』のパロディで、明治時代の大森海岸に攻めてきた火星人をバンカラ学生が撃退する、という物語です。
 しょうもない話といってしまえばそれまでなのですが、この『火星人類の逆襲』には、横田順彌さんのSF古典作品への愛と情熱がぎっしり詰まっていて、それだけで愛おしい気持ちになります。
 横田順彌という名前自体、おそらくほとんどの方がご存知ないのではないかと思うのですが、小松左京さんや平井和正さんが活躍した日本SF花盛りの時代に、ダジャレとパロディだらけのアホSFを書きまくってわが道を爆走していた異色作家さんです。
 わたしは小学校高学年から中学生くらいにSFにハマっていた時期があって、その頃に何かで手にとってから、あまりのくだらなさに手につくはしから読み散らしていったことがあります。
 横田順彌さんは古典SFの研究家としても知られており、戦前の日本SF作品や海外SFの翻訳については一目置かれる大御所です。
 むかしの翻訳ものでは、海外の地名や人名などが平気で日本のものに置き換えられていたりして、「火星人が大森海岸に攻めてくる」という設定も、元はそうしたトンデモ翻訳から着想を得たようです。
 さらにこの物語、登場人物から時代背景、物語の展開する日付にかんするまで、綿密な時代考証が施されています。わたし自身は別段古典SFマニアでも明治マニア?でもないので、その厳密性についてはなんとも言えないのですが、とにかく「この人ほんとに好きなんだなぁ」というのが伝わってきて温かい気持ちになるのです。
 最近小松左京さんの『日本沈没』が再映画化され、その自伝的著作が本屋さんで平積みになったりしていますが、この時代の日本SF界の、中心からちょっと外れたあたりで(すいません)活躍されていた横田順彌さん、この勢いで映画化されるような作品を書いてくれたりすると面白いのですけれどね。
 というか、『火星人類の逆襲』、映画化されませんかね。ウェルズの『宇宙戦争』よりはずっと映画にしやすい素材ですよ。低予算でハリボテみたいなセットで撮影しても、ちゃんと味として成り立つネタですし、どなたかやってくれませんか?

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