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2006年12月25日

簿記合格、簿記と愛と暴力

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 突然ですが、簿記三級合格しました(笑)。
簿記合格しました
 報告するのもちょっと恥ずかしいです。高校生じゃないですから・・。
 でも嬉しいです。
 別に資格マニアのつもりはないのですが、手軽な充足感を求めて色々試験は受けました。
 多分、簿記三級はその中でもかなりささやかな資格になると思います。世間的にはMCSDとかTOEIC890の方がずっと値打ちあるのでしょう。
 でもわたしにとっては、簿記はちょっとスペシャルな挑戦で、しかも多くのものを得ることができました。
 簿記、というよりお金との関係には、色々ヤヤコシイものを抱えているからです。

 と、ヤヤコシイ話に移る前に、月並みに勉強法の報告をしておきます。
 といっても、特別なことはやっていません。使った教材は以下の二つ。

『日商簿記3級とおるテキスト』 桑原知之『日商簿記3級とおるテキスト』 桑原知之

『日商簿記3級 出題パターンと解き方』 桑原知之『日商簿記3級 出題パターンと解き方』 桑原知之

 桑原知之さんによる『日商簿記3級とおるテキスト』と過去問の王道『日商簿記3級 出題パターンと解き方』です。
 『10日で合格る』等のもっと純粋に「試験対策」でお手軽そうなものもあったのですが、簿記に関してはわたしはまったくの素人。オマケに後述するようにものすごい苦手意識を抱えた領域です。離乳食クラスに噛み砕いてもらったところから始めて、堅実にお勉強しようと思って、この『とおるテキスト』を選びました。
 結論から言って、『とおるテキスト』は大正解でした。
 恥ずかしくなるくらい基本から丁寧に説明してくれているのですが、ツボはキチンと抑えていて、誤解を招くような端折り方をしていません。「難しいことを優しく説くが、本質は見失わせない」優良教材だと思いました。
 簿記の勉強をしていた頃は、わけあって一日一時間以上も転がって身動きできない日々だったので、これを有効活用しました。何せ「借方って?」みたいなレベルでしたから、とりあえず寝転がって『とおるテキスト』を二周。
 こんな易しいテキストなのに「やっぱりわたしには帳簿なんて無理だよぉ」と弱音を吐きつつ、二周する頃にはすっかり簿記ワールドと親しくなっていました。
 しかし簿記の試験対策で重要なのは「理解」ではありません。
 電卓を叩いて実践することです。
 もう、これがとにかく大切。逆に言えば、問題演習さえしっかり積んでいれば、そんなに深いところを理解している必要はありません。
 簿記の世界はちょっとびっくりするくらい機械的にできていますから、訓練さえ積めば身体が反応してくれるようになります。
 そのためにも絶対抑えておきたいのが過去問。
 『日商簿記3級 出題パターンと解き方』は最もオーソドックスな過去問題集だと思うのですが、これに収録されている問題は全問クリアしました。
 『とおるテキスト』にも書いてありますが、簿記三級でポイントになるのは第三問と第五問。試算表と精算表です。
 両方に30点ずつ配点があり、しかも毎回出題パターンがほとんど一緒ですから、ここが取れるかどうかが勝負の分かれ目です。
 第一問の仕訳問題と第四問の伝票・決算仕訳は確実に取り、試算表と精算表にエネルギーを注ぎ込み、第二問の変わり問題は「できたらラッキー」くらいで取り組むのがベストでしょう。
 でもワタクシ、試算表がとても苦手だったのですよ。
 勘定科目はすぐ覚えられます。T字を作って仕訳していくのもむしろ楽しいくらいなのですが、いつも最後に勘定が合わないんです。
 簿記として最も重要な部分が落ちています
 はっきり言って、本番直前までカンペキにこなせたことがほとんどありませんでした。
 芸術的なまでに計算間違いします。電卓使ってるのに間違えます。
 ホント向いていないと思います。理屈というか、仕組みは非常に面白いしよくわかるのですが、細かいところが常に抜けています。O型直情径行人間ですから・・・。
 ちなみに精算表の方は計算する部分も少ないし、ずっとラヴでした。
 気をつけるべきは、決算整理事項で売掛金や受取手形が増減したとき、これをちゃんと貸倒引当金の計算に反映させることですね。最初の頃はよく忘れました(笑)。固定資産に変更があった時に、減価償却費に反映するのも注意。
 第四問は結構好きな問題が多かったです。小粒でちょっと知恵を使う感じが面白いですね。

 実際に受験した結果スコアは、
第1問 20/20 第2問 10/10 第3問 27/30 第4問 0/8 第5問 32/32
 試算表は本番でも計算が合わなかったのですが、なんとか合格はできました。
 正直、簿記三級に落ちたら切腹ものだと思っていたので、ホッとしました。
 実は途中で三級の勉強に飽きて、二級も併願して途中まで勉強していたのですが、工業簿記がさっぱり面白くなく、冷静に考えてほとんど趣味でやっている簿記でなんでこんなに苦しんでいるのかわからなくなり、ブッチしてしまいました(笑)。ダメ人間です。

 さて、そもそも簿記を受験しようと思ったモチベーション。
 きっかけは、これまた恥ずかしい『ITエンジニアのための【業務知識】がわかる本』というのを読んでいて「会計アプリを扱うなら、まず簿記を勉強しろ」と書いてあったことです。
 別に今わたしは会計アプリケーションを担当しているわけではないのですが(ウチの会社もそこまでバカじゃない)、会計の関係しない商売などありません。いつも仕様理解で四苦八苦しているので、基本の基本から入門しよう、と考えたのです。
(ちなみにこの手の「恥ずかしい本」では『SEのための会計知識』も良かったです。あまり「SEのための」ではないですし、多分これくらいじゃ会計アプリ担当者も増して会計屋も務まらないと思いますが、会計の入門書としてわかりやすいです)

 とにかく役に立たない浮世離れしたことには詳しくても、世間の常識にはまるで疎いワタクシ。
 何度か書いていますが、中でもお金の話は大の苦手です。
 ことわっておきますが、苦手なのは「お金の話」です。
 お金が嫌いなわけではありません。お金、大好きです
 持っていれば手に入らないもののないお金。「お金で買えないものもあるでしょ」とか言いますし、確かにお金を積んでも手に入らないものはありますが、そういうものはお金がなくてもどの道入手困難だったりするので、とりあえずお金のことさえ考えておけば大抵のものはゲットできます。
 こんなステキなお金様なのに、それを巡るお話というのは、異様にこんがらがってヤヤコシイです。
 大切なことだから、詳しく細かく決まりを作っているうちに、透明性が低くなってしまったのでしょうか。
 思うに、お金というものがあまりに大切なせいで、敢えて実装が見えにくく作ってあるのです。
 狭義のタブーと一緒で、およそ「核心」と言われるものは、すべからく直接には「触れない」ように構造化されているものです。
 メカニズムが明らかになること自体で、そのものの価値が変質してしまうようなものについては、常に部分的にだけ真理であるような語らいだけが大量に醸成され、中心は徹底的に真空化されます。
 対象aと言ってしまえばそれまでですが、要するにお金についても、肝心なことは誰も教えてくれないものです。

 実はお金の好きな人間ほど、この事実に気が付きません。
 お金の好きな人間、お金に拘泥するヒトは、その物質性に囚われてしまい、構造的な位置づけを織り込んだ「大人」なお金観を持ちにくくなってしまうのです。
 本当にお金を設けられるヒト、お金の使い方のうまいヒトというのは、お金それ自体の価値に対しどこか斜に構えられる能力を持っているように感じます。横目でチラッと見るくらいの方が、お金に愛されるのです(って、人間も一緒ですね)。
 お金が大好きで、さらにわたしのような直情径行・猪突猛進型だったりすると、実る恋でも実りません。向き合おうとすればするほど、お金のルールがますますわからなくなるのです。

 もうちょっと深いことを言えば、お金に拘泥するというのは典型的な肛門性格で、脅迫的に帳尻を合わせて損得ロジックに閉じこもろうとする心理が働いています。
 そしてこの箱庭的思想は、近視眼的な狭いエリアに限って言えば、それなりに有効に働きます。
 正にここにこそトラップがあります。
 「追い抜いちゃった人たち、愛=暴力、資本」で書きましたが、箱庭ロジックは箱庭自体を成り立たせている砂漠の論理にはまったく通用しません。そして吝嗇な肛門的人間が忘れがちなのが、この砂漠の思想です。
 お金のパワーは砂漠からやってきます。
 お金なんてただの金属片や紙切れで、さらにハードディスクに記録されたただの数値ですから、それが箱庭の中で強大な力を発揮するのは、世界の縁からパワーを備給されているからです。
 ですから、本当にお金を知ろうと思ったら、どこかで損得を諦めてしまう境地が必要になります。箱庭の平和が完全には至らないことを受け入れて、視線をふっと外さなければならないのです。

 こう考えると、簿記というのは全然砂漠ではないので、その内部のロジックに拘っている限りは、ちっともお金に愛されない気がします。
 でもわたしのような変人が簿記を勉強していると、おそらくは普通に会計を学んだヒトが絶対考えないであろうようなアホなことを色々思いつきます。「追い抜いちゃった人たち、愛=暴力、資本」の最後で触れた資本の問題などがソレです。
 簿記は箱庭ロジックの低水準APIがむき出しになっていますから、注意して見ると箱庭に砂漠からエネルギーが注ぎ込まれている仕組み、つまり箱庭のボロのような部分がチラホラ見つかります。これがもっとラップされた次元になってしまうと、ソフィスケイトされすぎてわからなくなるのです。そういう意味で、簿記というのは非常に面白い経験でした。

 ちなみに、簿記はクロスワードパズルに似ていますね(笑)。
 正に箱庭、言語経済といったところです。
 クロスワードとはちょっと違いますが、碁盤の目状になったパズルで、正方形のブロックを上下左右に動かして模様や言葉を完成させていく、という玩具があります。言語の表象としてよく使われるものですが、このオモチャには必ず一つ空白のブロックがなければならないことが示唆的です。

 ついでに、簿記の用語もなかなか興味深かったです。
 簿記というとガチガチに固い世界のようですが、使われている言葉は意外に和語が多いです。
 純粋な和語ではないですが、例えば「仕掛品」なんて、実に日本語的で美しいと思います。
 「貸倒引当金」などもそうですね。漢字五文字なのでいかにも重いですが、発音すると「かしだおれひきあてきん」。貸し倒れになると困るから、予め引き当てておくお金。非常に動的で和語チックです。
 日本に複式簿記が輸入されたのは明治期のようですが、この頃に作り出された訳語というのは、含蓄に富んだ美しいものが多いですね。ベースボールが「野球」とか、惚れ惚れします。

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