『ヒトは環境を壊す動物である』
コンビニの誘蛾灯に虫が集まるのは、光源に対して一定の角度で飛ぶ昆虫の性質を利用したものであるのはよく知られています。「光源に対して一定の角度を保つ」ことは、昆虫の長い進化の歴史の中で生き残りにとってプラスであったからこそ現在まで引き継がれているわけですが、人工照明の誕生によって、逆に命取りになってしまったわけです。
同じようなことが環境問題についても考えられるのではないか、というのが本書の主題です。環境問題には「わかっちゃいるけどやめられない」こととヒトがいかに闘うか、という一面がありますが、これは人類の歴史の中でプラスに働くものとして獲得された性質が、巡り巡ってマイナスになってしまっていることと言えるからです。
といった「はじめに」の記述に惹かれ手に取ったのですが、はっきり言って環境問題の本ではありません。
冒頭で取り上げられたテーマについては、答えも案もほとんど示されないまま終わってしまいます。
では「ハズレ」な本かというと全然違って、非常に面白かったです。
「環境」概念の再考から、その認知の仕方の進化論的解釈まで、いくつもの分野をバチバチッと横断的につなげていく、スリリングでキャッチーな語りが展開されています。各論についてはざっと眺めるだけで深く掘り下げられることはないのですが、その分一般人には取っ付きやすく、著者の知的冒険にシンクロしやすい作りです。
タイトルは間違いだと思いますが、環境問題ではなく進化の本としてかなり秀逸です。
ただやっぱり、最初のお題が魅力的なだけに、もうちょっと環境問題にも深く絡めてほしかった気はします。
「心をリバースエンジニアリングする」など、個別のトピックでも興味深いものが多く、著者の他の本も読んでみたい・・と思ったら、『レヴィ=ストロース入門』なども書かれていますね。
個人的には、この本の続編的ポジションの著作を今後期待したいです。
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『ヒトは環境を壊す動物である』
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『ヒトは環境を壊す動物である』 小田亮