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2007年04月09日

『妻を帽子とまちがえた男』 オリバー・サックス

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『妻を帽子とまちがえた男』 オリバー・サックス 高見幸郎 金沢泰子『妻を帽子とまちがえた男』 オリバー・サックス

 『火星の人類学者』『左足をとりもどすまで』に続いてオリバー・サックス第三弾。これまた翻訳者はこれも絶賛した『天才と分裂病の進化論』の金沢泰子さん。24人の不思議な患者たちについて語ったエッセイ集です。
 ものすごい大雑把な「感想」としては『左足をとりもどすまで』以上『火星の人類学者』以下。
 非常に興味深い症例があるのですが、例によってサックスの能書きが長すぎます。
 総じて見ると面白い本なのですが、まだサックス先生の邪念が少し煩わしいです。偉そうなことを書いてすいません・・。
 『火星の人類学者』を読んで、とにかくもっと症例を見てみたい!でもあんまり難しい本を読む根性はない!という方にはぴったりでしょう。
 表題になっている「妻を帽子とまちがえた男」の逸話は大変美しいです。客観的に見ると深刻な病状なのですが、本人が気に病んでいないところ、そして奥様もそれほど悩んでいなさそうな辺りに救われます。

 サックスの本を読んでいると、音楽の素晴らしさを再認識させられることが多いです。
 チックの男性が、平日は薬で症状を抑えながら、休日は逆に薬を断ち、その特質を生かして素晴らしい演奏を見せるエピソードはとても印象的です。その他にも「音楽に救われた」ケースがいくつも紹介されています。
 別段神経を病んでいなくても、ミュージシャンという人種には(プロ・アマを問わず)「ドラムという楽器がなかったらこの人どうなってたんだろう」というような方がしばしば見られます。地上に音楽というものを作って下さった神様に本当に感謝したいです。

 また「病気」概念そのもについても考えさせられるところが大きいです。
 上の患者さんの場合、確かにチックは「病気」で、社会的には困ることもある一方、症状への愛着との相克する感情もあり、また場面によってはプラスに活かすこともできています。
 この感じ、ものすごい共感してしまいます。
 わたし自身、日常で「負い目」になっている「病気」があるのですが、本当のことを言えばこれを「病気」と言うのは世の中で普通に生きていくための方便でしかないでしょう。
 「普通に生きて」いきたいので、やっぱり「病気」でないと困ることは困るのですが、たまにはネタスパークさせてみたいです・・・。

 ちなみに、「病気ってなんなの」という懐疑について、精神疾患プロパーですが面白く考えている本に『精神疾患はつくられる―DSM診断の罠』があります。
 ちょっと挑発的というか、社会派クサイところが難なのですが、かなり読ませます。
 別にDSMを否定する気はサラサラないですし、マトモな医療従事者はこの本の指摘するような問題をわかった上で、なお次善の策として前向きに取り組んでくれているのでしょうけれど。
 「DSMって何?」な方は是非是非読んでみてください。

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